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茅野市・原村・富士見町の地価は今どうなっている?業者139社の本音から読む八ヶ岳西麓の不動産市場(2026年4月)

  • 6月4日
  • 読了時間: 11分

不動産の話をするとき、私たちはたいてい「価格」を見る。地価公示、地価調査、取引事例。どれも数字で、誰が見ても同じように見える。

ただ、数字には映らないものがある。現場の不動産業者が、この半年、何を感じていたか——そこだ。

長野県宅地建物取引業協会と長野県不動産鑑定士協会が年2回続けている「不動産市況DI調査」は、まさにそこを拾っている。県内1,430業者に「半年前と比べて地価はどう動いたか」「取引件数はどう感じるか」を尋ね、その回答を指数(DI値)にしたものだ。2026年4月実施の第21回は、139社が答えている。

このシリーズでは八ヶ岳西麓3町村(茅野市・原村・富士見町)を中心に、半年に一度、同じ場所を同じ角度から見続けている。今回は地価そのものではなく、「業者の体感」という別の温度計を当ててみたい。なぜなら、この半年は数字に出にくい何かが現場で動いていた期間だからだ。

鑑定士の仕事は、価格という「結果の数字」と、現場が感じている「体感」の両方を突き合わせて、その土地の本当の動きを読むことにある。今回はその両輪のうち、後者を中心に置く。そして最後に、私たちが八ヶ岳西麓で日々の査定・買取・物件の紹介をするなかで感じていることを、協会の数字に重ねてみたい。

この半年、世界と日本で何が起きていたか

第21回が拾っているのは、2025年10月から2026年4月までの半年間の実感だ。

まず、この半年に世界と日本で何が起きていたかを俯瞰しておきたい。地方の小さな町の地価も、実は大きな流れの末端で動いているからだ。

  • 海外との関係:中国の渡航規制で海外からの不動産への関心が一度途切れ、中東情勢の緊迫が長引いた。世界の出来事が、原油・資材・為替を通じて日本の建築コストに響いた。

  • 円安と物価高:円安が続き、輸入資材を中心に物価が上がり続けた。家を建てる総額が、土地の値段とは別のところで膨らんだ。

  • 株高と都市の不動産:株価は高い水準で推移し、東京の新築マンション価格は上がり続けて、いよいよ一般の世帯には手が届きにくい水準に達しつつある。都市で「普通に家を持つ」ことの難易度が上がった。

  • 日本全体の人口減:その一方で、日本全体では人口が減り続けている。総量としての住宅需要は、長い目で見れば細っていく。

これらは一見バラバラだが、地方の住宅市場から見ると一つの方向を指している。建てるコストが上がり、都市での暮らしの設計が見直され、けれど人口そのものは減っていく。価格は上がりやすく、取引は動きにくい——今回のDI調査が映したのは、この大きな流れが長野県の現場に届いた半年の姿だ。

地価のデータは「価格がいくらか」しか語らないが、業者の自由記述には、その背景が生の言葉で出てくる。今回の調査票には、県内各地の業者自身の口から、こういう言葉が並んでいる。

  • 「世界情勢の悪化による物価高が今後も懸念される」(松本地域)

  • 「土地取引の規制や中東紛争の長期化、物価高などで取引は減少傾向と考えられます」(北信地域)

  • 「円安の影響で海外からの輸入資材がほとんど上昇している」(松本地域)

  • 「資材価格の高騰等による建築費の上昇」(長野地区)

これらは八ヶ岳西麓そのものの声ではなく、長野県の各地域の業者の声だ。ただ、建築費の高騰という一点では県全体が同じ方向を向いている。価格データは「結果」しか見せない。業者の声は「なぜそうなったか」を見せる。この半年は、世界の出来事が建築費を通じて長野県の住宅市場に届いた半年だった——というのが、139社の現場感覚から読み取れる構図だ。

県全体の温度計——「価格は上がる、でも動かない」

まず県全体の数字を置く。

  • 住宅価格DI:今期実感(2026年4月)+18p → 次期予測(2026年10月)+13p

  • 取引件数DI:今期実感(2026年4月)▲13p → 次期予測(2026年10月)▲22p

価格のDIは10期連続でプラス。つまり業者の多くは「地価は上がっている(または下がってはいない)」と感じている。一方、取引件数のDIは継続してマイナス。「件数は減っている」という実感だ。

この「価格は上がるのに件数は減る」という組み合わせが、今回の調査全体を貫いている。協会の総括も、物価高・建築費の高騰で住宅価格は上がらざるを得ないが、結果として需要が弱含み、取引件数は減り続ける、とまとめている。

ここは丁寧に読みたいところだ。価格が上がっているのは、土地そのものの人気が沸騰しているからではない。建てるコストが上がったから、総額が上がり、結果として手が出にくくなって件数が減っている。価格上昇と取引減少が同時に起きるのは、市場が元気だからではなく、むしろ硬直しているサインに近い。

諏訪地域(茅野市・原村・富士見町)——上昇が止まり、横ばいに座った

ここからが本題だ。八ヶ岳西麓3町村のうち、茅野市・富士見町・原村は調査区分上「H 諏訪地域」に入る。

  • 住宅価格DI:前期実感(2025年10月)+23p → 今期実感(2026年4月)±0p → 次期予測(2026年10月)+11p

  • 取引件数DI:前期実感(2025年10月)+14p → 今期実感(2026年4月)+10p → 次期予測(2026年10月)▲11p

価格DIが前期の+23pから今期±0pへ。これまでの上昇実感が止まり、横ばいに転じた。協会の地域コメントも「これまでの上昇局面から横ばいへと転じた」としている。次期予測は+11pと再びプラスに戻る見込みで、長期的には概ね安定的に推移するとの見方だ。

取引件数は今期+10pで小幅ながらプラスを維持。県全体がマイナス圏にあるなかで、諏訪地域は数少ない「件数プラス」のエリアだった。ただし次期予測は▲11pと、ここも再び停滞に向かうとの見方が出ている。

諏訪地域の業者の自由記述も静かだ。「例年に比べて、平穏の状況です」「移住希望者の要望にそえる物件数が減少しているため」。煽りも悲観もない、淡々とした現場の言葉が並ぶ。

諏訪地域の数字を、八ヶ岳西麓の現場に降ろす

DI調査は「諏訪地域」というひとくくりで集計される。茅野市・富士見町・原村だけを取り出した数字は出てこない。だから協会の±0pは、岡谷・諏訪・下諏訪まで含んだ広い平均だ。

そこで、八ヶ岳西麓で実際に査定や買取をしている私たちが、この半年に何を感じていたかを、協会の数字の解像度を上げる形で書き留めておきたい。一社の現場感覚にすぎないが、こういう一次の声は、半年に一度残しておく価値があると考えている。

まず、外からの需要については、冒頭で触れた中国の渡航規制の影響が、八ヶ岳西麓でも体感としてあった。海外からの土地への関心が一時的に途切れた時期があり、それは数字より先に現場の問い合わせの肌触りとして伝わってきた。

一方で、各地の業者が口にしている「中東情勢」については、八ヶ岳西麓ではあまり影響を感じていない。これは見落としやすいが、実は構造をよく表している。世界情勢の緊迫が直接響くのは、外資やインバウンドの需要に価格を預けている土地だ。八ヶ岳西麓3町村は、そもそもその波の外にある。だから外で何が起きても、現場の体感が大きく揺れない。「中東を感じない」こと自体が、この土地が外需に左右されにくいことの裏づけになっている。

そして、はっきり強まっているのが、物価高と都市の住宅価格に押し出される形での移住ニーズだ。冒頭で見たとおり、都市では家を持つ難易度が上がっている。その圧力が、暮らしの設計そのものを見直す動機になっている。「価格が上がって手が出ない」という県全体の硬直とは逆の方向で、八ヶ岳西麓では「自分の暮らしを自分で持てる場所」を探す相談が増えている。畑があり、区があり、住宅がある——そういう土地への問い合わせが、この半年むしろ高まっている実感がある。

協会の±0pという数字は、こうした複数の流れが打ち消し合った後の平均値だと考えると腑に落ちる。外需が冷えた分と、移住ニーズが温まった分が、ちょうど横ばいのあたりで釣り合っている。数字が「動かない」ことの裏側で、需要の中身は静かに入れ替わっている。

「平穏」という言葉を、構造として読む

ここで一歩引いて考えたい。

軽井沢の業者の声を見ると、温度がまるで違う。価格DIは+71pと県内最高水準で、自由記述には「地価上昇につき物件(適正な)が少ない」「価格上昇に伴う、購買力とのギャップ」「一部業者の買いだめで流通量が少ない」といった、過熱と品薄の言葉が並ぶ。白馬村に至っては「高すぎて住む家も見つからない、地元住民が住みにくくなって出ていく」という、かなり切実な現場証言が出ている。

軽井沢と白馬は、外からの需要(別荘・インバウンド・海外資本)が価格を押し上げる構造だ。価格は派手に動く。けれど、その動きは地元の暮らしと必ずしも連動していない。白馬の業者が書いた「悪循環」は、価格が上がること自体が地元の人を押し出してしまう構造を指している。

これに対して諏訪地域の「平穏」「±0p」は、外からの投機の波が届かない場所の、別の安定だ。茅野市・富士見町・原村は、新幹線やリニアの大動脈ルートからも外れ、盆地に囲まれて、外部開発の波が構造的に届きにくい。だから価格が爆発的に上がることもないが、暴落することもない。

このシリーズで繰り返してきた見方をもう一度置くと、動かない地価は弱さではなく、構造の表れだ。今回のDI調査は、その構造を「業者の体感」という別の角度から裏づけた、と読める。軽井沢の+71pと諏訪の±0pは、優劣ではない。何に値段が預けられているかが違うだけだ。前者は外の需要に、後者はそこに住む人の根に。

取引件数が減ることの意味——手放されない土地

もうひとつ、件数の話をしておきたい。

県全体で取引件数DIがマイナスを続けていることを、「市場が冷えている」と読むこともできる。ただ、八ヶ岳西麓3町村に関しては、別の読み方が要る。

件数が少ないことには二つの理由がありうる。買いたい人がいないから動かないのか、売りたい人がいないから動かないのか。前者なら市場の弱さだが、後者は土地が手放されていないということだ。畑があり、区があり、山林がある暮らしの土地は、世代を超えて持ち続けられることが多い。だから市場に出てこない。出てこないから件数が少ない。

査定の相談を受けていても、八ヶ岳西麓では「早く売りたいから値段を知りたい」よりも、「相続したが、手放すかどうか迷っている」という相談の方が体感として多い。すぐ売る前提ではなく、持ち続ける選択肢も含めて考えたい、という構えだ。これも、件数が穏やかであることの内訳の一つだと思う。

これは衰退ではなく、根の深さの裏返しでもある。価格が動かず、件数も穏やかで、業者が「平穏」と書く——その全部が、同じ一つの構造の別の表情だと考えている。

次の半年に見ること

今回のDI調査は、地価公示・地価調査という「価格の事実」に、「業者の体感」という温度計を一本追加してくれた。半年に一度、同じ問いで取られ続けるこの数字は、定点観測の素材として続けて見ていく価値がある。

次の第22回(2026年10月実施予定)で確かめたいのは、今回業者が出した予測——諏訪地域の価格+11p・件数▲11p——が、その通りになるかどうかだ。世界情勢と建築費が今後どう動くかで、現場の体感はまた変わる。

そして、いちばん注意して見たいのは、八ヶ岳西麓3町村が「平穏」のまま留まり続けるかどうかだ。もしここに、軽井沢や白馬のような価格急騰と品薄の言葉が業者の口から出始めたら、それは外の波が届き始めた合図になる。そのときは、この土地の構造が変わり始めたということだ。

そうならない限り、私たちはこれまで通り、淡々と同じ場所を見続ける。

土地を探している人にとって、この数字は何を意味するか

ここまで業者の体感を読んできたが、最後に、これから八ヶ岳西麓で土地や家を探す人の視点に立ってみたい。

「価格が動かない」「件数が穏やか」という数字は、土地探しをする側からは、こう読み替えられる。

  • 急いで奪い合う市場ではない。軽井沢のように品薄で値が吊り上がる場所ではないので、自分の暮らしの設計に合う土地を、腰を据えて選べる。

  • 値段が外の事情で乱高下しにくい。中東情勢のような外の出来事で価格が大きく振れないということは、買ってから資産価値が投機的に揺さぶられにくいということでもある。

  • 出てくる物件は、手放されにくい土地が手放された一件。件数が少ないぶん、一つひとつの物件には、なぜ今このタイミングで世に出たのかという背景がある。畑付き・区のある集落・山林を含む土地は、そう簡単には出てこない。

だから、八ヶ岳ライフが物件として紹介する土地には、価格や面積といった数字だけでなく、その土地が「整いの宅地」なのか「余白の森」なのか、区や畑や水利がどう備わっているのかといった、暮らしの設計に直結する情報を必ず添えるようにしている。動かない市場で一件を選ぶということは、数字を比べることではなく、暮らしの構造を読むことだからだ。

具体的にどんな土地が出ているかは、物件一覧のページで見られる。今回のDI調査が映した「動かない」という構造を頭の片隅に置きながら眺めると、一件一件の見え方が変わってくるはずだ。

これは煽る話ではない。半年に一度、現場の人が何を見ていたかを書き留めておく。それだけのことだ。見えた人にだけ伝われば、十分だと思う。

※本記事は、長野県宅地建物取引業協会・長野県不動産鑑定士協会「第21回 長野県不動産市況DI調査」(2026年4月実施・有効回答139社)をもとに、八ヶ岳ライフ株式会社が独自の視点で整理したものです。DI値・自由記述は同調査の公表値に基づきます。地価そのものの数値分析(地価公示・地価調査)は別記事で扱っています。

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