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八ヶ岳西麓で山付きの土地を買えば、薪ストーブの薪はタダになる?——お金は減って、手間と乾かす一年が残る

1 日前
読了時間: 6分

長野県が県内の薪ストーブ利用世帯に行った調査(2010年度)では、半数を超える53%の世帯が、薪を一本も買わずに自分で調達していました。 同じ調査で「薪の入手でいちばん苦労すること」を聞くと、最も多かった答えは薪割り

でも運搬でもなく、「どこから木を手に入れるか」でした。

それなら、山付きの土地を買えば一番の苦労は消えるはずです。ところが実際には、山を持っていても薪が回らない家があります。何が違うのか。

先に答えを書いておきます。自分の山で薪はまかなえます。ただし、それを決めるのは山の広さではなく、木の若さ・乾かす場所・伐る前の手続きの三つです。

敷地の木で薪をまかなえる八ヶ岳西麓の雑木林

この記事で分かること

  • ひと冬に必要な薪の量と、買った場合のおおよその負担

  • 薪が「回る山」と「回らない山」を分けるもの

  • 自分の山の木を伐るときに要る手続き

薪ストーブの薪は、ひと冬にどれくらい要りますか?

長野県の調査では、1世帯あたり年間平均約9m³。多いのは4〜10m³の家です。

1m³をおよそ50束として換算すると、平均で450束前後になります。焚く期間は10月下旬〜11月下旬に始まり、4月上旬に終わる家が多く、平均で約5か月です。量は標高・断熱・焚く時間で大きく変わるので、あくまで目安です。

薪の値段は、この十数年で大きく上がりました。2021年の日本特用林産振興会の報告書に載った販売例では、乾いた広葉樹の薪が1m³あたり約2万〜2.9万円です。2010年度調査で全量を買っていた世帯は1m³あたり約1万円だったので、当時の2倍以上になります。平均の9m³をすべて買えば、年18万〜26万円ほどの計算です(産地・樹種・送料で上下します)。

薪の作り手の側も動いています。林野庁の統計では、2025年の全国の薪生産量は104,618層積m³で前年より5.5%増え、主な生産地の筆頭に長野県が挙がっています。長野は今も薪の主産地で、買う道も身近にあります。

山付きの土地なら、薪はタダになりますか?

お金は減りますが、その分が手間と時間に置き換わります。

先の調査で挙がった苦労は、入手先探し33%、薪割り・切断24%、伐採・搬出21%、運搬10%でした。山付きの土地が解決するのは最初の33%です。残りの半分以上は、自分の体で払うことになります。

もう一つ、見落とされがちなのが時間です。薪は水分20%以下まで乾かさないと、暖まらず煙ばかり出ます。県は、自分で割る場合は1シーズン乾かした薪を使うよう勧めており、調査世帯の乾燥期間は平均13.3か月でした。

つまり、今年の冬に伐った木は、来年の冬の薪です。山を手に入れた最初の冬は、たいてい買うか、もらうかで越すことになります。自給は思想というより、二冬先を段取りする生活の実務です。

伐採後、土場に積まれた丸太。今年伐った木が来年の冬の薪になる

どんな山なら、薪が回り続けますか?

広さより、木が若いかどうかで決まります。

里山の雑木林は、かつて20〜30年おきに伐られ、切り株から出る芽(萌芽)で再生する形で使われてきました。林野庁によれば、利用されなくなった今、多くの里山は幹が太く背の高い林に変わっています。

太くなりすぎた木は、伐り倒すにも割るにも個人の手に余ります。しかもコナラの研究では、伐採時の林齢が高いほど切り株から芽が出にくくなり、60年生を超えると萌芽による再生は難しいとされています。一度伐れば終わる山と、伐るほど次が育つ山があるということです。

一方、カラマツなどの針葉樹の植林は、切り株から芽が出ません。伐った後は植え直すか、周りから落ちた種で別の木が育つのを待つことになり、その計画も伐る前の届出に書き込みます。薪としては火持ちより火の付きやすさが持ち味で、焚き付けに回すのが向いています。雑木の山か、植林の山かで、薪の回し方そのものが変わります。

カラマツなど針葉樹の植林に沿う道

山付きの土地を見るときは、面積の前に次の四つを見ます。

  • 木の太さと種類:ナラやクリなどの広葉樹は火持ちが良く、カラマツなどの針葉樹は焚き付けに向く

  • 道:軽トラックが木の近くまで入れるか

  • 平場:二冬分の薪を積んで乾かせる、日当たりと風通しのよい場所があるか

  • 家までの距離:雪の朝に薪棚から家まで運べるか

伐った木を運び出す作業道。軽トラックが木の近くまで入れるかが薪の回しやすさを決める

〔内部リンク:①-C2-1 住む場所と採りに行く場所——集落の立地の読み方〕

自分の山の木を伐るのに、伐採届は要りますか?

地域森林計画の対象森林なら、伐る前に市町村への届出が要ります。

森林法により、対象森林で立木を伐るときは、伐採を始める日の90日前から30日前までに「伐採及び伐採後の造林の届出書」(いわゆる伐採届)を市町村へ出します。伐った後に植え直すか、自然に再生させるかの計画もこの届出に含まれ、完了後には報告も必要です。

伐採届を出したうえで進める山林の伐採作業

対象森林かどうかは登記の地目では決まらず、長野県の「信州くらしのマップ」で確認できます。保安林や大きな開発には、別の手続きがあります。

当社は茅野市・原村・富士見町で、山林の買取・再生のなかで伐採届を日常的に扱っています。山付きの土地をご検討の際は、届出の要否と道の状態を、買う前に一緒に確認します(お取り扱いはこの3市町村の土地に限っています)。

薪の自給は、一軒で背負うものですか?

いいえ。木が地域の中で回っている所なら、全部を自分の山で賄う必要はありません。

県の調査では、薪の元になった木は山林が67%、リンゴなど畑の木が19%、河川敷の木が5%でした。県のガイドも、剪定した木を譲ってもらう、森林整備で出た木をもらうといった入手方法を挙げています。

自分の山で半分、残りは地域から。自給とは、一軒で完結させることではなく、燃やすものの出どころを手元の範囲に置くことです。

冬の実務も正直に書いておきます。調査世帯の半数は煙突掃除を年1回行っていました。灰の処理は8割を超える世帯が自分で行い、畑や庭に撒く家が多い。山の木が家を暖め、灰が畑に戻る。 手間はかかりますが、その手間ごと暮らしの一部になります。


まとめ——自給は、二冬先を段取りすること

山付きの土地を持てば、薪の一番の苦労である「入手先」は消えます。けれど薪が回るかどうかを決めるのは、山の広さではなく、木が若いか、二冬分を乾かす場所があるか、そして伐る前の届出と道です。

足りない分は地域の木で補えばいい。燃やすものの出どころが手元に見えていること——それが、八ヶ岳西麓で言う自給の実際の姿です。

なお、山を伐って太陽光発電設備を置く計画や、立木の売却益を目的とした山林取得のご相談はお受けしていません。

〔内部リンク:①-C2-2 田んぼ付きの土地の水は、誰が分けている?〕

出典

  • 長野県環境保全研究所・長野県林務部「薪ストーブ利用実態調査結果」(2011年6月、有効回答241世帯)——年間使用量、自家調達割合、2010年度の購入額、乾燥期間、入手の苦労、使用期間、灰・煙突の処理

  • 日本特用林産振興会「令和3年度 特用林産物(薪)に関する情報の収集・分析・提供 報告書」(2022年3月)——薪の販売価格の実例(1m³あたり20,000円、メッシュパレット換算で約28,500円)

  • 林野庁「特用林産物の生産動向等」(令和7年 特用林産物生産統計調査)——全国の薪生産量104,618層積m³、前年比5.5%増、主な生産地

  • 長野県「薪ストーブ」ガイド(水分20%以下、1シーズン乾燥、入手方法)

  • 林野庁「里山林の薪炭や、きのこ生産資材としての利用」(20〜30年間隔の伐採と萌芽更新、里山林の大径化)

  • 日本森林学会誌「コナラの伐採時林齢と伐採株の状態が萌芽枝の発生と成長に及ぼす影響」(60年生を超えると萌芽更新が難しい)

  • 長野県森林政策課「伐採及び伐採後の造林の届出制度」(対象森林、信州くらしのマップでの確認)

  • 森林法第10条の8(届出期間:伐採開始の90日前〜30日前)

写真.avif

この記事を書いた人

朝倉 宏典

(あさくら ひろのり)

八ヶ岳ライフ株式会社 代表

不動産鑑定士

登録番号 第8446号

宅地建物取引士

東京都知事登録 第168949号

宅地建物取引業者免許

長野県知事(3)第5281号

大学在学中に不動産鑑定士二次試験に合格。日本中央地所、三井のリハウスでの鑑定実務、田園調布リアルプランでの売買仲介を経て、東日本大震災を機に独立。生まれ育った八ヶ岳西麓に戻り、茅野市・原村・富士見町の三町村で、山林・農地・空き家・古民家・別荘を、仲介ではなく自社で買い取って整え、暮らせる土地として提供しています。農地転用・境界確定・水利調整・伐採届などの行政手続きも自社で対応し、年間300件を超える査定相談に向き合っています。

八ヶ岳ライフ株式会社 〒391-0003 長野県茅野市本町西5番23号 TEL 0266-72-5880

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TEL 0266-72-5880

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