井戸・上水道・浄化槽・下水道で土地の値段はどう違う?【茅野市・原村・富士見町】
- 8月10日
- 読了時間: 8分
更新日:6 日前

土地を探していると、物件情報の欄に必ず出てくるのが「上水道・井戸」「公共下水道・浄化槽」という条件です。ここが値段にどう効いているのかは、あまり整理して語られていません。
不動産鑑定士として茅野市・原村・富士見町の土地を見てきた立場から、実額と公的な統計を並べて整理します。
井戸・上水道・浄化槽・下水道で、土地の坪単価はどう違いますか?
水と排水の組み立てによって、八ヶ岳西麓の土地は坪あたりおよそ次の三段に分かれます。
上水道+公共下水道(集落の中)……坪あたり 約5〜20万円
上水道+浄化槽(森の中・別荘地)……坪あたり 約3〜7万円
井戸+浄化槽(集落の外)……坪あたり 約2.5〜4万円
農地(田・畑のまま/里地の耕作地)……坪あたり 0.4万円前後
(2026年8月時点。茅野市・原村・富士見町で当社が扱っている取引の実額をもとにした目安です)
高い安いより、幅の広さを見てください。上水道と公共下水道が来ている土地は、下は5万円から上は20万円まで開きます。一方で井戸の土地は2.5万〜4万円に収まります。
集落の中ほど値段の幅が大きく、集落から離れるほど幅が狭くなる。この形が、値段の正体を教えてくれます。
当社の物件だけでなく、市場全体でも同じ差がありますか?
あります。茅野市の中だけで、坪単価に8倍以上の開きがあります。
長野県が毎年9月に公表している地価調査(2025年9月時点)を、茅野市内の場所ごとに並べるとこうなります。
茅野駅前・市街地……1平方メートルあたり38,400円(坪あたり 約12.7万円)
エコーライン沿いの集落帯……1平方メートルあたり19,900円(坪あたり 約6.6万円)
メルヘン街道沿い(蓼科の森)……1平方メートルあたり4,570円(坪あたり 約1.5万円)
同じ市の中で、これだけ違います。先ほどの三段と並べると、順序も幅の出方も一致します。市街地の12.7万円は上水道+公共下水道の帯の上のほう、集落帯の6.6万円はその中ほど。森の帯の1.5万円は、井戸の土地の下限よりさらに下です。
集落の中ほど値段の幅が広く、上に長く伸びる。市場の数字にも同じ形が出ています。つまりこれは当社の値付けの癖ではなく、市場全体にある構造です。
なお、3町村の土地取引は年間およそ320件(茅野市185件・富士見町87件・原村51件、2020〜2025年の平均)で、いずれも穏やかな水準です。値段が急に動く場所ではありません。
(出典:長野県地価調査、および国土交通省 不動産情報ライブラリの取引価格情報。3月公表の地価公示とは調査の趣旨が違うため、地価調査のみで集計しています。取引価格情報は件数の比較にのみ使用しています)
井戸の土地が安いのは、井戸だからですか?
いいえ。集落から離れているから井戸で、集落から離れているから値段が下がっています。順序が逆です。
上水道の本管は、人が住んでいる所へ向かって延びてきました。家が集まっている場所だから管が来ていて、離れている場所には来ていない。つまり水道の有無は、その土地が集落の中にあるか外にあるかを映した結果です。
値段の差も同じことを映しています。学校や店までの距離、除雪の入る順番、隣の家までの距離——そうした集まり具合の差が、水道の有無と一緒に価格へ出ているだけで、管そのものが値段を作っているわけではありません。
集落の中の値段の幅が5万〜20万円と広いのも、これで説明がつきます。集落の中には、駅に近い土地から山際に寄った土地まで、条件の幅そのものが広く存在します。集落の外に出ると条件の種類が減るので、幅も狭くなります。
面積の影響も混ざります。同じ条件でも、1,500坪の土地と130坪の土地では坪単価は変わります。三段の差は、水道の有無だけでなく、集まり具合と広さを合わせた結果として見てください。
浄化槽は臭いませんか? 井戸の水は飲んで大丈夫ですか?
都市部から来られた方から、ほぼ必ずいただく質問です。結論から言えば、心配されている中身と、実際に負担になる部分がずれています。
「浄化槽は臭うのでは」……臭いのイメージは、し尿だけを処理していた古い型のものです。いま設置されているのは台所や風呂の排水も一緒に処理する型で、送風機が正常に動いていれば、外に立っても分かりません
「浄化槽は手間がかかる」……点検が年1回程度、汚泥を抜く清掃が2年に1回程度。使用人数や使い方によって変わります。いずれも業者に依頼する作業で、住む人が何かをするわけではありません
「井戸の水は飲めるのか」……飲用に使う場合は水質検査を受けます。原村は村の上水道そのものが深井戸の地下水で、蛇口の水も井戸水です。ただし鉄分やにおいの出る井戸もあり、これは1本ずつ違います。既存の井戸なら過去の検査結果を確認します
「井戸は涸れないか」……季節で水位は動きます。深さと過去の実績を確認してから判断する部分で、机の上では分かりません
「停電したら水が出ない」……井戸はポンプが電気で動くので、これはその通りです。ここは正直な弱点で、対策を決めてから住むところです
浄化槽の手入れの間隔も、実際に暮らしてみると想像より穏やかです。点検が年に1回、汚泥を抜く清掃が2年に1回程度。使う人数が多ければ短くなりますし、二拠点で使用が少なければ延びます。頻度も費用も契約する業者と槽の大きさで変わるので、購入前に見積もりを取っておくと、暮らし始めてからの見通しが立ちます。
不動産鑑定士・朝倉宏典より
井戸や浄化槽は、なじみがないから選べない——移住を検討されている方から、この言葉をよく聞きます。 良し悪しを判断した結果ではなく、判断する材料を持っていないから選べない、という状態の方がほとんどです。
実際のところ、いま茅野市で入っている浄化槽は性能が上がっていて、臭いません。現地でご案内するときも、言われなければ浄化槽だと気づかない方が多いです。ここは、写真や数字ではなく現地で確かめていただくのが一番早い部分です。
井戸についても一つ。原村は村の水道そのものが深井戸の地下水なので、蛇口の水も井戸の水も、もとは同じです。そして消毒を入れない分、井戸のほうが水そのものに近い——私はそう考えています。もちろん水質の確認は自分でする前提ですが、「井戸は不安、水道は安心」という切り分けは、この地域では必ずしも当てはまりません。
原村の水道は井戸水だというのは本当ですか?
本当です。原村の上水道は、すべて地下約100メートルの深井戸から汲み上げた地下水です。
つまり原村では、村が井戸水を配っています。蛇口から出る水も、敷地に掘った井戸から出る水も、もとをたどれば同じ地下水です。水源が違うわけではありません。
違うのは、消毒の有無です。水道は法律で塩素による消毒が義務づけられているので、村の水道には消毒が入ります。個人の井戸には入りません。同じ地下水でも、蛇口に届くまでの扱いが違う、ということです。
これは井戸の利点でもあり、そのまま裏返せば管理の話にもなります。消毒がないぶん水そのものに近い一方、水質の確認は自分で手配することになります。
(出典:原村移住推進ポータルサイト「上下水道はどのようになっていますか?」)
それぞれ、どんな利点と難点がありますか?
どちらが優れているかではなく、費用と手間がどこに現れるかが違います。
上水道+公共下水道の土地
利点……入居までの工事が少なく、水量と水質を自分で管理しなくてよい。集落の中なので、除雪や買い物の距離が短い。金融機関の評価もつきやすい
難点……坪単価は高く、幅も広いので土地ごとの見極めが要る。水道料金と下水道使用料が毎月かかり続ける
上水道+浄化槽の土地
利点……飲み水は本管から取れるので水質の心配が小さく、その分だけ広い土地が手に入る。森が近い立地が多い
難点……点検が年1回程度、汚泥を抜く清掃が2年に1回程度かかる。別荘地内なら管理費が別に発生することもある
井戸+浄化槽の土地
利点……坪単価が最も低く、広さが取れる。水も排水も自分の手元にあり、月々の水道料金は発生しない
難点……停電時の備えが要る。冬は凍結対策と水抜きの手順を覚える。水質検査は自分で手配する。集落から離れるほど、除雪と買い物の距離は伸びる
農地のまま
利点……水の経路そのもの(水利)が付いてくる場合がある。価格帯は最も低い
難点……家は建てられません。農地法の許可が要り、地域によっては在住要件があります
井戸と公共下水道を組み合わせた土地の実例は、茅野市豊平 三井の森隣接の土地 485坪 でご覧いただけます。

結局、どこで判断すればいいですか?
総額の安さではなく、費用の出方のリズムで判断してください。
上水道と公共下水道は、毎月の使用料として少しずつ、ずっと払い続けます。井戸と浄化槽は月々の料金がない代わりに、ポンプの交換や浄化槽の点検といった形で、数年おきにまとまった出費が来ます。
総額でどちらが得かは条件によります。けれどお金の出方のリズムがまったく違うので、ここを知らずに買うと、後になって「思っていたのと違う」になります。
そして値段の差は、設備の差ではなく、集落の中にあるか外にあるかの差です。井戸の土地を選ぶということは、安い設備を選ぶことではなく、集落から少し離れた場所を選ぶということ。その距離を受け入れられるかどうかが、本当の判断どころだと思います。
見えている便利さの裏側には、必ず維持費があります。それが毎月の請求書として来るのか、数年おきの工事として来るのか——どちらが自分に合っているかは、人によって違っていいはずです。
この記事の次に読むなら
井戸のある土地を実際に買うとき、引き渡し前に何を見るのか。水量・水質・深さを一件ずつ確かめた記録です。
値段の差が集落の内と外の差だと分かったら、次は自分がどちら側を選ぶかです。土地を二つの型で整理しました。
同じ土地でも、見る人によって値段は変わります。その差がどこから出てくるのかを四つの層で説明しています。



